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読書な毎日(216)

【ぼくは戦争が大嫌い】 やなせ たかし
 彼の没後に出版された、やなせのおそらく最後の本。やなせがアンパンマンを書いたのはひもじかった戦争体験が原点になっているというのは有名な話ですが、やなせ自身の戦争体験については意外にもこうやって一冊の本にまとまってはいなかったそうです。なぜなら、やなせが自身の戦争体験を語りたくなかったから。けれど彼も死期を感じたのか”今語っておかねば”と思いこの本になったのです。
 やなせは昭和15年に軍隊に徴兵で招集される。除隊間近のところで日米開戦。戦争末期に中国に派兵され実戦も経験しています。ほとんど戦闘は無く使い物にならない大砲を移動していただけと書いてますが同じ部隊で死者も出ているのでそれなりに大変だったのでしょう。これはやなせの性格なのでしょうが、大変なことでもそれほどたいしたことないとポジティブに捉えています。戦地においても自分の絵の才能をいかして紙芝居やったり演劇やったり、現地民と交流したり。水木しげるもそうでしたが、クソマジメに兵隊をやってしまうのではなく任務はそこそこに、それ以外にも楽しみをというスタンスが生き残りそしてその後も成功し長寿をまっとうしたという秘訣なのでしょう。
 彼の弟は謙遜でしょうが自分に比べて優秀で士官学校に入りそして戦死したそうです。しかし、弟の遺品は何も帰ってこなかったそうな。これこそ戦争のむごさですね。
 タイトルの通り、やなせは戦争はまっぴらゴメンです。彼に限らず戦争好きのアーティストなんていないよね。そんな彼ですが南京虐殺に関しては”なかったと信じている”というスタンスです。なぜかと言えば、彼が南京に行ったとき現地は平穏で日本兵も歓迎されたとのことなのです。もちろんその体験からの発言でしょうが、なんでわざわざこのセンシティブな問題で主張しているのかな、とここだけ不思議な感じがした。つまりは大規模な戦闘や虐殺があったとしても数年もすれば何事もなかったようになってしまうもの、ということなのでしょうが。
 やなせは大戦の末期は暗号班にいて、日本の戦況がわかる立場にいたそうです。新型爆弾(原爆)が投下されたことも知っていました。戦争の怖さを情報戦の面でも知っていた人ということなります。本著が彼の遺作となってしまったのがちょっと残念です。映画のアンパンマンの最近作には政治的メッセージも込められていました。もっともっとアンパンマンつくって欲しかったがいつまでもやなせ先生に頼ってられないよね。残った私たちが再び戦争の世界にならないようにしなくてはいけない。
(★★★☆)

【”核”を求めた日本 被爆国の知られざる真実】 「NHKスペシャル」取材班
 NHKスペシャルの書籍化。日本が核兵器を持つ道を画策していたという驚くべき内容。日本が原発に今だにこだわる理由はエネルギーではなく核兵器であるということが露に。震災前の2010年10月の放映だが気がつかなかった。
 被爆国家日本は非核三原則を表向きはずっと堅持していたように見えますが、裏では日本が核兵器を持つにはどのような技術が必要でどれぐらいの期間があれば開発できるかという研究をしていたのです。これは亡くなる前の村田良平 元外務事務次官が暴露したことで事実でしょう。
 米国は日本に核兵器を持たせたくないと考えていました。基本は自分たち以外これ以上どの国も持たせないというスタンスです。そこで日本は同じ敗戦国 当時の西ドイツと核武装について日本側から持ちかけて密談していた。日本と西ドイツが連携して核兵器を持つ方策はないかと。西ドイツ側はこれを聞いて日本がそんなことを考えていたのか、と非常に驚いたとのことです。これは1969年の話ですが、今だにこの流れが生きているからもんじゅでプルトニウム抽出にこだわり、気象衛星を打ち上げるロケット技術にも力を入れているのです。北朝鮮の人工衛星打ち上げを”事実上の核ミサイル”みたいな言い方をするのも日本がそのつもりでやってるからなんですね(^^; だから格下と思っている中国が核兵器を持ち北朝鮮が核実験なんかするから悔しくて仕方ないという構図なんだ...。
 311前は核兵器と原発を結びつけることはかなりのタブーでした。それは脱原発界隈でもそうで、異端児として見られました。しかし、原発事故があれだけの被害を日本に及ぼしたことによりその圧力は消えたようです。けれど、逆に安倍晋三のような核兵器を持ちたい人たちが”日本も核を持てる!”みたいなことを平気で言うようになっています。
 また、日本の国際社会においての核兵器に対するスタンスについても本著は調べています。日本は常に核廃絶や核軍縮に反対していたのかと私も勝手に思っていたのですがそうではありませんでした。むしろ非核三原則宣言以降急激に落ち込み、賛成率は約半分だというのです。賛成しないときは棄権か反対ということになります。これはアメリカの意向が多分に入っています。日本を守る核の傘を維持するためアメリカの核軍縮に関しては反対という立場。今だにこの路線は続いています。
 今の国際情勢と国内世論から日本が核兵器を持つことはないとは思いますが、紛争に巻き込まれる可能性はどんどん高くなっています。なにしろ、あの安倍晋三が総理ですから。先日の人質事件に関してもわざわざ自分で”罪を償わせる”と加筆したとのこと。自民党も早く彼をなんとかした方がいいんじゃない?と言っても今権力を持ってる人たちは安倍総理と同じ思いの人ばっかりのようなのだが...。
 本著で言うところの日本が核兵器を持とうとしていたという文脈にはアメリカから離れて独立国としてというのがあったと思います。今の安倍総理はアメリカから独立するとはこれっぽっちも思っていないでしょう。ただ他国を威嚇できる強い武器が欲しいというレベルでしかありません。日本の政治の劣化は著しい....。
 本著読んだの1年ぐらい前なのですが感想文書くのずいぶん遅れてしまった。
(★★★★)

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