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読書な毎日(209)

【電通と原発報道】 本間 龍
 著者は元博報堂の社員だった人で原発と電通というより広告代理店とメディアとスポンサーの関係について書いてある本です。著者は現在は代理店とは縁のない世界にいるそうで遠慮なく書いてあります。
 代理店業界の1位はご存知の通り電通で2位が博報堂。以下その他というぐらい差があるのがこの業界。電通の強さはメディア枠を多く既に押さえているところにあります。つまり枠をある意味言い値でスポンサーに提供できるということ。当然ながらメディアにとってはうれしい話。とりあえず電通が枠を買ってくれてスポンサーを探してくれるのですから。この持ちつもたれつの関係はTVの草創期からはじまっています。日本のTV放送がはじまったのは1953年。アメリカの日本占領が解除された直後です。日本のメディアのあり方が今のようにお上に従順で自主規制ばかりするようになってしまったのはこの時期が大きく影響しているでしょう。
 電通は正にTVと一緒に大きくなった会社です。歴史としては博報堂の方が古い。インターネットが出現するまでは正にTVと電通の天下でした。しかし、その王道は近頃通用しなくなっています。居間にTVがあってみんなで座って同じ時間に同じ画面を見ているというライフスタイルがインターネットや携帯端末の登場によって消失したからです。視聴率の高い番組に広告をうっておけば良いという時代は終わったのです。その状況の中で広告業界はどうすれば消費者に宣伝が届くか試行錯誤しているのです。
 電通はコネ通とも呼ばれ、有力者やスポンサーの子息を採用もしていてその政治力に影響されることも多いようではありますが、結局は金をたくさん出すスポンサーのいいなりの企業なのです。金づるは最大限の努力を惜しまず守る。ネガティブな情報や事故があれば広がらないように工作する。だから東電だってあれほどの事故が起こしても必死で守ろうとしていたのです。
 電力会社が大量の広告をうつようになったのはわりと最近の話。1999年のJCO事故が契機になっています。あれで危機を感じた原子力村が原子力の悪いイメージを払拭するために大量の広告を打ち、特に情報・ニュース系の番組のスポンサーとなって目を光らせるようになった。だから原子力のネガティブなニュースはほとんどのぼらず、いつの間にか54基もつくられてしまったのだ。
 ところが現状は東電の広告は全くなくなりました。電事連の広告も全くやっていません。事故直後は”節電しろ!”という恫喝するような広告をやっていましたが、ついに彼らを広告がうてない状況に追い込んだのです。これは大きな勝利と言ってよいでしょう。今後少なくとも”東電”という名前で広告をうつことは不可能でしょう。それが証拠にでんこは引退し、ピーアール館もしめざるをえなくなりました。広告業界もこの状況をようやく理解したでしょう。東電からはもう二度と広告が出ないことを。
 東電はデカイし政治力も持っているのでなかなか観念しない。でも、東電と原発はいつか消えてなくなることでしょう。イメージアップは不可能だし、これだけのことをやらかしたのですから。
 本著は東電だけでなく他の大スポンサーのこともいろいろ書いてありますが概して大スポンサーというのは性格が悪いようだ。電器業界の松下、食品業界の日清、洗剤業界の花王、自動車業界のトヨタなど。我が家はどれももともと買わないけどね。性格の悪さは商品に出るのだ。
 本著を読んでホッとしたのは広告業界では義理や人情よりカネが重要とわかったこと。つまり金の切れ目が縁の切れ目。東電と電通の蜜月は既に終了したということです。電通のようなイメージ戦略のプロを失った東電はただ滅びゆくのみ。原発ももちろんオシマイ。
(★★★★)

【私が愛した東京電力】 蓮池 透
 拉致被害者の蓮池薫の兄の手記。彼が東電に勤めていたという話は聞いていたがこんな本を出すとは。蓮池透氏自身は事故前から東電を退職していましたが、東電に入社し福島原発、柏崎原発、核燃料サイクルと原発畑をずっと歩んできた人。自分が長年勤めてきた会社に対する愛の鞭と言って良いのが本著です。
 彼の原発に対する結論は段階的廃炉による脱原発。再処理は廃止です。理由は核廃棄物問題が解決する見込みがないことと、これ以上核廃棄物を増やせないことによります。彼も原子力村の住人ですから原発の安全性にはある程度の自身を持っていたようです。だから今回の事故はショックだったのです。だから、言わなければならないということで彼は”脱原発”を表に立って言うようになったのです。
 さすが現場の人間だっただけあり本著の内容には凄味があります。原発というのは米国のGEのターンキー契約による代物だそう。つまり自動車と同じ。東電はキーをもらって運転しているだけで壊れても直せないのです。東芝や三菱も設計図通りにつくってるだけのライセンス生産。
 東電はいばってると思っていましたが更にいばってるのはやはり官僚だった。東電には官僚用の会議室があり、そこには官僚のすきな飲み物を冷やしとく冷蔵庫もあったそうだ。日本のガンはホントこの官僚様なんだよな。
 先輩にわざと被爆させられるようなイジメを受けたこともあるそうだ。ちなみに蓮池さんの子どもは全員女の子だそう。
 蓮池さんがこのような本を出したのは東電を愛するがゆえ。東電に変わってほしいからです。ところが東電はその愛に応える様子が全くありません。蓮池さんはツイッターをやっていて私もフォローしていますが、最近は東電や原子力に愛想つかしぎみのように見えます。もう彼らに自浄能力を期待するのは無理のようだ。私もこの本を読んだ当時(半年ぐらい前)はまだ段階的廃炉を提唱していました。原子力村にも生活があると思っていたからです。ところが彼らの反省のない様子を見せられ続け”即廃炉派”に転向しました。もうダメです。彼らに配慮していたら地球が滅びてしまいます。
 たぶん次に蓮池さんが本を出すなら「私が愛していた東京電力」になることでしょう。
(★★★★)

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