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読書な毎日(208)

【ショージとタカオ】 井手 洋子
 布川事件の元被告の桜井昌司と杉山卓男を釈放後15年にわたって追ったドキュメンタリー映画の取材記。通常こういう本は映画の公開にあわせて出るものだが、公開が終わってから出版されたもの。というのもこの映画の公開当時は再審無罪が出ておらず、映画が公開されそして無罪判決が出るところまでが本著では描かれています。私は映画の方は見たかったのですが見てません。本著によると登場人物の中にDVD化望まない人がいるらしく、DVD化の予定はないそうです。
 布川事件は冤罪の代名詞みたいなものだったので本件の概要については知っていましたが詳しくは知らず。本著を読んでこれまたひどい事件だったとわかりました。一人暮らしの大工が殺されてお金を盗まれた強盗殺人で、なかなか犯人が捕まらず。捜査上に上がったのは近所で知られたチンピラ二人、それがショージとタカオだった。二人は別々に別件逮捕され、犯行を自白。もちろんこれはやっていない事件の自白。裁判になって二人は起訴事実を否認しますが無期懲役が確定。刑期を終えて出所してからも再審請求運動を15年もやってようやく無罪を勝ち取る。
 二人は確かに町のチンピラではありましたが、殺人はしていない。やってもいないことで牢屋に入れられ無罪を晴らすのに40年とはなんともふざけた話です。本著を読むとよくわかるのですが無罪を勝ち取るために二人はかなりの努力をしています。獄中から自分は無罪であることを発信し続け、釈放後も無罪あることを各地でアピールを続ける。おかげで布川事件は世に知られる事件となった。無罪を勝ち取れたのはこの二人だったからで、普通の精神力の人間では到底無理だったのではなかろうかと思います。つまり泣き寝入り冤罪というのはおそらくこの10倍どころではないのではなかろうか。日本の警察&検察、そして裁判というのがいかにおかしなシステムであるかというのがわかります。裁判の原則は”疑わしきは罰せず”のはずですが”疑わしくなくても罰する”が実態なのです。
 この二人のすごいところは生きることに貪欲であること。普通なら冤罪とはいえ25年もぶちこまれていたら出所しても何もする気がしないでしょう。ところが二人は新しいパートナーを見つけて結婚し、タカオの方は子どもにも恵まれます。そしてついに再審無罪を勝ち取る。
 二人だから頑張れたというのもあるようですが、お互いにわだかまりも持っています。元はこの二人は顔見知り程度でつるんでいたわけではなかった。逮捕をきっかけにお互いを知ったが、相手のせいで自分が捕まったかもしれないと思っている部分もあるのです。こうやって容疑者同士を疑心暗鬼にさせるのが警察の取調べの手法なのですが、それはなかな消えないのです。
 運悪いことに本作の公開と二人の再審は東日本大震災に重なってしまいました。映画は予定通り公開されましたが、再審は延期。天災とはいえこんだけ待たせといて更に延びるとは残酷な話だ。
 日本の冤罪の多さとそれを覆すことの難しさはおそらく世界有数でしょう。これをして司法改革だったはずなのですが、裁判員制度でごまかされてしまいました。しかし、政権交代したおかげで冤罪が顕在化してきたので、今や冤罪が珍しくないことを多くの人が知ったはず。村木裁判や小沢裁判で検察も信用がならないことも知られてきました。ここで本当に改革しないと日本はますます暗黒国家になっちゃうぞ。
 監督が本作をとるきっかけは、集会の撮影を頼まれたこと。作品にするつもりで撮っていたわけではないが、二人に興味もち作品として仕上げたのです。いっちょあがりのドキュメンタリーとは訳が違う。とにかくショージとタカオは絶対みたい。上映会を探していかないと。
(★★★★)

【福田君を殺して何になる】 増田 美智子
 光市母子殺人事件のルポ。著者はフリーライターで個人的興味から本件の取材をはじめ、発表媒体があったわけでも出版の予定があったわけでも無かったそうだ。
 少年が死刑になるかどうかということでマスコミが大騒ぎした事件だったが、私はそれほど興味を持っていたわけではない。なぜ本著を読んだかと言えばワル警の寺澤さんの出版社から出てるものだったから。
 本事件は有罪は間違いないが量刑が適当かが問題になっている。当時18歳だった福田君。この福田という実名をマスコミは出していません。なぜなら犯行当時少年だったから。しかし、死刑を煽ったのはマスコミです。著者は少年Aが死刑では、その人物が浮かび上がってこないという理由で福田くん本人にも了承をとって実名を公開しています。本著はこれが功を奏していますが、福田君の弁護団はこのことに怒っています。
 本作は福田君に著者が手紙を出しそれに返事がかえってくるところからはじまります。その返事はマスコミで描かれている悪魔とはかけ離れたものです。小学生が苦労して文通しているような手紙。まだ会ったこともない相手だというのにお友達のような慣れなれしさ。おそらく福田君は軽度の知的障害ではなかろうかと私は思います。特に女性との距離のとり方がわからず、”自分はじつはけっこうモテるんだ”みたいなことを平気で手紙に書いています。
 彼が悪魔とされたのは、収監されて全く反省していないからとされています。その根拠となっているのは収監中に近くの房にいた青年との文通です。彼らは意気投合し、文通するのですが他に娯楽がないこともあり、悪ノリがすぎるようなときもあった。先に青年は釈放されますが文通は続く。そこに警察がやってきて青年に手紙を公開するように迫り、更には悪ノリを煽るような手紙を書かせます。そしてこれが裁判で証拠として採用され、週刊誌にも出て福田君は悪魔の代名詞となるのです。そもそも事件後に書いていた手紙が証拠と採用されるというのはアリなの?しかも警察がその内容を煽っていたというのはどういうこと?
 福田君自身は人を二人も殺したのだから死刑もやむなしと思っています。しかし、この事件は詳細に分析すれば量刑として死刑は適当ではありません。以下は私の推測するストーリーです。福田君は水道工事の仕事をしていてこの日はさぼっていた。職場近くのマンションに水道検査のフリをして何軒か訪問。そのうちの一軒の本村家で奥様にやさしい対応をされたため、自分に気があると勘違いし抱きつくが拒否され大声を出されたのでパニックになり絞殺。そして死姦する。子どもが泣き止まなかったのでこちらも絞殺。そして財布を盗んで逃走した。
 確かにこれは強盗強姦殺人ですが、初犯であり突発的な犯行です。また、少年であり知的障害の可能性もあり犯行当時はパニック状態だったと思われます。反省していないと叩かれていましたが、私信をとりあげて反省していないというのはおかしな話。実際福田くんは反省しています。
 彼の生育環境もこの事件の大きな原因になっているようです。彼の父はDV男でお母さんや福田くんをよく殴っていました。お母さんはそれにいつも耐えていましたが、彼が小学生のときに自殺。しかし、福田くんは父が母を殺したかもしれないと思っています。その後再婚して弟がうまれますが父のDVは相変わらず。福田くんは学校で勉強もスポーツもできませんでしたが、いつもおどけていて憎めないタイプだったようです。いわゆる天然ボケ。今もそれは変わらず、悪魔というより落ち着きの無い子どものようです。
 安田弁護士に変わった最高裁での裁判に出てきた証言”どらえもんがなんとかしてくれると思って押入れに赤ちゃんを入れた”というのもボケてるふりではなく、本当にそう思っていたのです。これら証言に関しては前任弁護士のときにも、言ったが相手にしてもらえなかったそうだ。
 安田弁護団から著者は門前払い状態です。安田弁護士はマスコミ嫌いです。たいてい、あることないことを面白おかしく報じるだけだから。だから、信用した人しか相手にしません。著者の増田さんは言ってみればポッと出です。それで、福田君に会いその周辺を取材していたので良く思わなかったのでしょう。これだけの本を書く人なんだから安田弁護士も一度会ってみれば良かったのにと思います。
 光市母子殺人事件とは思っていた以上に様々な要素が絡まった今の日本を象徴する事件だったということを本著を読んで知りました。死刑、少年犯罪、知的障害犯罪、マスコミ、弁護士、警察、DV。死刑判決が出て、世間はこの事件を忘れてしまったようですが今も安田弁護団は減刑を求めて再審請求をしています。福田君はまだ20代です。彼を殺しても何の解決にもなりません。
(★★★★)

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今年の小学生の環境浄化ポスター展は「節電」テーマが大幅減

Kposter2012 今年も昨年同様に環境浄化ポスター展なるものを中野坂上の駅でやっていたので、昨年との比較のためテーマ毎に分類してみた。今年は昨年より数が多くて168枚あった。ちなみに昨年の記事はこちら


節電  17枚
ゴミのポイ捨て・分別  54枚
自然・地球を大切に  49枚
リサイクル  4枚
温暖化・CO2削減  5枚
タバコポイ捨て  8枚
大気汚染・排ガス  0枚
節水  2枚
挨拶しよう  4枚
複数テーマ   4枚
電車駈込み防止 6枚
自然エネルギー 1枚
その他  14枚

 昨年1番多かった節電が今年は3番手に。割合で言えば6割減。昨年が異常でした。今年は節電キャンペーンやってませんからこんなもんでしょう。減った分はゴミのポイ捨てと自然を大切に流れた感じ。1枚ぐらいあっても良さそうな放射能、脱原発テーマは無かったが自然エネルギーを大切にというのが1枚あったからやや進歩か。
 昨年も書いたが環境浄化と言えば東京の場合、放射能もそうだが大気汚染が一番の問題と私は思うのだが今年はこのテーマなんと0枚。ゴミのポイ捨てやめようというのが1/3を占めているが、日本の街って既にゴミはほとんど落ちてない。そんなに啓蒙しないでもいいのでは?ゴミの中でもタバコのポイ捨ては分けて分類しましたが、確かにタバコの吸殻だけは今もいっぱい落ちています。ゴミは捨てない日本人だけどなぜかタバコは平気でポイポイ捨てるのは不思議な現象だ。小学生は見てるんだよ。
 昨年気がつかなかった電車駈込み防止が6枚もあった。無理して電車に飛び乗るのも確かに日本人特有かもしれない。

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