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読書な毎日(205)

【原発官僚】 七尾 和晃
 著者は原発ではなく経産省の前身の通産省時代から同省を取材しているジャーナリスト。従って経産官僚が何を考えて原発を増やしていったかというプロセスを知っている人物なのです。他の原発本にはない話が多くあり実に興味深かった。
 一言で言えば原発とは経産省の利権だった。大規模な公共事業であり継続性ある限り、あれが発電プラントだろうが原子力だろうがなんでも良かったのです。
 資源エネルギー庁は1973年のオイルショックを契機にできたエネルギー監督庁で経産省配下にあります。石油に頼りすぎていた日本のエネルギーを天然ガス、石炭、そして原子力に分散させた。通産省は内陸部にはテクノポリス、海岸線には原発とさながら国とりゲームのごとく全国に建設。通産官僚が大名のごとく地方都市に君臨した。これを足がかりに各県に経産省出身の知事や大臣が誕生していく。もともと経産省は政治に強い省ではなかったが原発で力をつけていったのだ。川口順子、太田房江、高橋はるみ、鈴木英敬など。現職知事を数えてみたら経産省系はなんと9人もいた。
 けれど、スリーマイル、チェルノブイリの事故などあり日本国内での原発建設は次第に難しくなっていく。通産省の存在意義自体が問われたこともあったが橋本行革で”経済産業”という存在意義のありそうな名前をゲットし引き続き資源エネルギー庁を配下にした。国内ではエネルギー需要が頭打ちとなりそもそも発電所が必要なくなってきた。原発の建設は海外へと目が向けられる。民主党への政権交代後むしろ輸出商品として原発は祭り上げられる。正に官民一体で海外に売り込む。原発バブルが頂点に達しようとしていたときに爆発したのが福島原発だった。日本のそして経産省の最有力輸出商品だった原発が吹き飛んだ瞬間だった。
 経産官僚もあの爆発を信じたくなかったが、彼らの変わり身は実に早い。自分らも共犯者だったはずなのに、”東電のせいで台無し”になったことにして既に他人事。彼らも、日本の原発が世界で売り物にならないことぐらいわかっている。逃げ足の早い官僚は次の利権に路線を変更していることだろう。
 とにかく日本は今の官僚制度を変えないことには変わらないだろう。電力会社を変えれば済む話でないし、政権交代しても変わらないことが今回のことでわかった。さて、どうするか言えば市民と政治家がタッグを組んで官僚制度を変えることだ。官僚は市民と政治家を対峙させて消耗させようとするが、その戦法にはまってはいけない。敵はヌエのような官僚だ。
 官僚も日本が成長しているときには本当にやらなければいけないことがたくさんあったのだろうが、日本は既に成熟社会になっている。けれど、官僚の発想は相変わらず。自省のことが最優先で利権を拡大し、既得権益はできるだけ手放さない。結果として不要な予算がドンドンつぎ込まれていく。彼らにとって必要不要は二の次で予算が減ることが悪なのだ。
 今回の原発事故でも新たな利権と見るとさまざまな省がとびついてくる。除染やがれき、復興支援、まさに化け物の類である。そんな官僚の中からも古賀茂明氏のような仮面ライダーも登場している。そこを突破口にショッカー軍団をやっつけないと日本は官僚帝国になってしまうことだろう。増税しても全部官僚が持っていくだけ。官僚を養うのが日本の目的になってしまうのだ。
 とにかく、本著も読んでおくべき本だ。
(★★★★)

【ナニカアル】 桐野 夏生
 ボルネオ旅行の予習ということで検索にひっかかったので読んだ本。ボルネオと言っても南の方だったので私らが旅行したところでは無かったですが。林芙美子という実在する女流作家を描いた作品。桐野作品はOUTと二冊しか読んでませんが、能力のあるすごい作家だね。
 林芙美子は名前は知っていて新宿にも記念館あるだが作品も作風も知らず。戦前から活躍していた女流作家で、戦時中は戦意高揚レポートの類を戦地に渡って書いていたのだった。ここから先は本著の物語部分も含みますが本音は戦争万歳ってわけではない。しかし、戦時下ではある意味書かざるを得ないのです。そういう重苦しい戦時下の雰囲気が本作からは伝わってきます。
 林は結婚はしていたが子どもはいなかった。夫は嫌いなわけではないが、林には編集者の愛人がいた。戦地で彼と密会するのが楽しみだった。戦争に翻弄されながら危険な恋に飛び込んでいく。正に映画のようだ。昔が舞台ですが、まったく古さを感じさせず瑞々しいリアルな登場人物が物語を引っ張っていく。
 ラブとサスペンスな物語ですが、一言で言えば反戦の小説です。戦争ってのは大いなる無駄。資源面で見ても、人間活動の面においても。
 映画や連ドラの素材として適した作品ですが、今や日本にはこれを映像化するパワーはないかな。
(★★★★☆)

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