« 新宿区南榎町 ご近所にホットスポット | トップページ | 各国のフクシマ後脱原発事情 »

読書な毎日(202)

【A3】 森 達也
 オウム真理教を撮ったドキュメンタリー映画「A」「A2」の続編にあたるルポ。A3も一応映像化も考えてカメラを回していたが今のところ映画にするつもりはないそうです。なぜなら前2作であまりにも客が入らなかったからだそう。
 本著はプレイボーイに連載されたものを加筆単行本化したもの。松本被告とその信者らの裁判が中心です。著者は彼らに何度も面会しその周辺にも精力的に取材を重ねています。森氏らしいステレオタイプではないオウムと松本智津夫を本著では見ることができます。私は森氏の2本の映画はもちろんのこと、その関連書も読んでいますが、本著読むまで知らなかったオウムをたくさん発見しました。オウムについて私もまだまだ知らなかったのです。
 松本氏は熊本生まれで目が不自由。宗教家となる前は鍼灸を職としていますが、ヨーガ教室をはじめオカルト系雑誌にとりあげられるようになり、宗教法人へと変わります。マスコミにもとりあげられるようになり、教団が大きくなっていく過程で信者の突発的死亡事故が発生する。これを隠蔽工作したことが、暴走のきっかけとなります。秘密を共有した幹部信者らの粛清行動はエスカレートし、第二第三の殺人を招きついには後戻りができなくなっていく。松本智津夫はもちろんこれらの事件を知っていた。指示もした。しかし、彼自身は盲目でもあり殺人の実行犯であったことは一度もなかった。実行犯の信者たちが気の狂った人殺しだったわけでもない。つまりは組織防衛な訳で、警察の圧力が強まれば強まるほど結束し先鋭化していきますが、彼らは訓練された軍隊ではありません。統率はとれていないし無計画で適当な素人集団。国家転覆などどだい無理。宗教法人が隠れみのになってしまったところがありますが、もっと早く警察はなんとかできなかったのだろうか。証拠がばらまかれているというのにそれを捕まえられない警察の無能ぶりも露呈しています。もっと早く動けていればサリン事件など起こることは無かったのではなかろうか。浅間山荘の事件も言ってみればこれに似ている。下手に追い込むから彼らは暴走してしまうのです。
 松本智津夫の人物像ですが、人好きのする人望のあるタイプだったようです。自然と彼の周りには人が集まり、話も上手だった。非常にまじめで宗教家としてもそれなりのレベルにあり、第六感も鋭かったようですが、お金への執着がけっこうあったようで、これが教団の拡大化と暴走につながっていった感じです。
 裁判に関してはもう最初から松本智津夫死刑ありきで進んでいきます。オウム関連すべての事件に松本氏は関わっていると言ってよいので、膨大な審理が必要とされるはずですが証言や証拠も不確かなものでもかなりのスットバシで裁判は進められようとします。更にはあろうことか、松本氏の弁護士を引き受けた安田弁護士が目障りということで、不当逮捕までします。法治国家以前の世界。日本ってこんなスゴイ国なんだね(^^; そんなこんなやってるうちに盲目の松本氏は独居房で意識が次第に混濁し、ついには意思疎通が不能な拘禁反応状態に。けれどもこれを詐病とし、裁判は続けられる。廃人となった松本氏は何も語らない。事件を検証する機会は失われてしまったのです。
 なぜオウムに高学歴の若者がひかれたのか、とよく言われましたが私たちだって何らかの組織に属しています。原子力村の人たちを”なぜあんな放射能をまき散らすプラントをつくったのか!”と人々は責めるかもしれませんが彼らはそれが良いもので自分の人生をかけるに値するものだと思うからやっているのです。一度乗った船の方向を自分で修正したり否定するのは難しいことなのだ。
 著者はオウムの地下鉄サリン事件つまり、1995年3月20日が日本にとっての大きなターニングポイントだったと言っています。何がというのは森氏の著作を何冊か読めばわかるでしょう。確かに私もそうだったと思いますが、あれから16年。日本にとっての次のターニングポイント2011年3月11日がやってきてしまいました。時代はまた大きく動こうとしています。
(★★★★☆)

【原子炉時限爆弾】 広瀬 隆
 ”東京に原発を”の著者の久しぶりの原発警告書。福島の原発震災にあわせたかのように2010/8に発売されていたものでした。この本が出ているの気がついてはいたのですが、書いてあることは想定できたので読まず。原発震災後になって読みました。一応想定内の内容でしたが、2010年の6月に福島第一で今回の前兆とも言える冷却水喪失事故が起きていたとは本著を読んではじめて知りました。ワールドカップサッカーのバカ騒ぎのかげでこの事故はほとんど報じられていなかったのです。
 広瀬氏はチェルノブイリ事故をきっかけに日本の脱原発を目指す市民運動組織、たんぽぽ舎を設立しました。同組織は現在も活動中で大きなテーマの1つとして取り上げられていたのが地震起因の大事故の原発震災でした。本著はその原発震災に絞って書かれた本でその多くの部分を地震のメカニズムとそれが起こる周期そして場所についてさいています。震度7の地震が来れば原発はもちろんどんな建物でも持ちこたえることはできないので、地震が来れば原発が壊れるという話は自明ということかその点についてはそれ程詳しく書いていません。
 今回の原発震災で東電と経産省は事故の原因を津波にしたがっています。なぜなら津波なら防波堤や発電機の増設で見た目の対策がやりやすいから。もし津波の前に地震で壊れていたとしたら大変なことになります。今回の揺れはたったの500ガル程度。それで壊れたことになりますから他の全ての原発の耐震補強をしなければならなくなります。しかし、既に稼働している原発に耐震補強するのは限界があるため多くを廃炉にせざるを得ない状況に。これは彼らが考えたくないシナリオなのです。
 今回の原発震災で広瀬 隆はひっぱりだこになりました。なにしろ東電が想定外と言って言い逃れしようとしている地震と津波のシミュレーションがここにはまんま書いてあるからです。しかも広瀬 隆とたんぽぽ舎は本を書いてるだけでなく、このシミュレーションについて何度も東電や他の電力会社に申し入れ質問状も出しています。しかし電力会社はこんな事はありえない!ととりあわず、想定しなかっただけなのです。私もこの運動に関わっていますので、東電の性質はよく解ってます。情報を隠したり、嘘をつくのは常套手段。彼らが守っているのは自分の組織だけ。プライドだけはものすごく高い。だから私は今回の事故も最初から東電の言うことなんか1ミリも信じていません。周辺情報を集め彼らが何を意図してウソついているかというのをいつも推測しています。太陽光発電を8年前に我が家に設置したのもそんな東電からできるだけ電気を買いたくないからです。
 事故からもう二ヶ月もたってしまいましたが、ようやく風向きが変わってきました。人々も東電や経産省がどんな組織で、原発というパワープラントがいかに問題多きものかと言うことを認識してきました。広瀬氏や小出氏が国会に呼ばれるようになっています。本当は原発爆発という劇薬が無くても脱原発できなくてはいけないのだろうが、劇薬あってしてもなかなか進まない状況を見ると、これがないと日本は変われなかったんだろうなと思う。脱原発は単に原発をやめるということだけでなく、脱官僚(大手マスコミ含む)でもあるのです。それが日本のジャスミン革命たる所以です。
 今回の事故で脱原発が仮にできなかったとしたら、脱官僚も達成できなかったということになるでしょう。そしてまた事故が起きます、そのときは官僚もろとも日本は終わり。正に亡国の官僚だね。そのときは地下帝国でもつくるのかな?
 やや読みにくい本ではあるのですが、あまりにも正確に近未来を予言していた本なので、★1つプラスしました。
(★★★★☆)

|

« 新宿区南榎町 ご近所にホットスポット | トップページ | 各国のフクシマ後脱原発事情 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 読書な毎日(202):

« 新宿区南榎町 ご近所にホットスポット | トップページ | 各国のフクシマ後脱原発事情 »