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読書な毎日(193)

【知事抹殺 つくられた福島県汚職事件】 佐藤 栄佐久
 福島県知事の佐藤 栄佐久知事が自身が逮捕された水谷建設の事件について書いている本。この事件は現在の民主党の小沢をめぐる騒ぎとも関連しています。
 まず、検事側の主張。福島県木戸ダムの工事発注の際に天の声を発し、水谷建設に落札させる。水谷建設はその礼に佐藤知事の弟の経営する会社の土地を評価額より高い値段で取得。その差額が佐藤知事の賄賂にあたる収賄罪。
 一方、佐藤知事の主張を要約すると、木戸ダム建設にあたり天の声を発したことはない。弟の会社、三東スーツの土地を水谷建設が購入していたことも知らない。
 ちなみに、この土地は転売され現在ショッピングセンターが建っていて評価額は水谷建設が購入したときより高くなっています。
 この事件はいわゆる国策捜査にあたるものと言えるでしょう。東京地検特捜部が動き、かなりの無理筋を立件しています。立件のポイントは佐藤知事が賄賂を受け取ったか否かということになります。この土地購入が賄賂にあたるのか。土地の価格というのは言ってみれば時価で路線価という基準はありますが、相手が売ってくれる値段が価格になります。この土地は後に地価が上昇し、むしろ水谷建設は土地売却で儲けています。また三東スーツの土地が売れたことが兄の賄賂にあたるというのもかなり無理があります。佐藤知事は確かに当時、三東スーツの役員だったが経営権は弟にあり役員会にも出席していません。そして佐藤知事は天の声をいつ発したのか。この天の声を受けたのは当時の土木部長なのですが、彼の供述がかなり曖昧で何時なのかはっきりしていません。そもそも天の声って何なのでしょう(^^; いつから天の声で立件できるようになったのでしょう。
 しかし、当初は無罪を主張していた佐藤知事でしたが弟から水谷建設に土地を売る話を聞いて知っていたという自白をしています。東京地検特捜のエースによる連日の取調べ、そして佐藤知事だけでなく彼の支援者たちにも取調べされたり、責任を感じて三東スーツの役員が自殺したりあり、これ以上頑張っても皆に迷惑がかかると思い、知らない話を知ってると言いオチてしまったのです。
 ちなみにこの事件で贈賄したとされる水谷建設の幹部は脱税で収監中(佐藤知事の件では立件されていない)なのですが、最近になって自分が儲けるために三東スーツの土地を買ったと言ってるそうなのです。これで佐藤知事の冤罪&国策操作は間違いなのないところでしょう。しかし二審まで有罪判決となってしまっています(無罪主張で上告中)。そしてこの幹部は小沢事件でも重要なキーマンで、水谷建設に5千万円贈ったというのは彼の証言なのです。こんないい加減な幹部の話は信用できるのでしょうか。
 さて、この佐藤知事はなぜ国策捜査の対象となったのか。理由はおそらく2つ。その1つ目は国策の原発政策にとって非常に邪魔な存在であったことです。福島には第一第二あわせて10基もの原発があります。これらはすべて東京電力の原発。つまり福島の電気はつくっていない原発です。しかし、福島に建っているので様々な許認可権を知事が持っています。例えば原発の新規建設、原発のプルサーマル使用。
 プルサーマル原発とは、プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を発電に使う方式です。プルトニウムは核兵器への転用が可能なため、保持していると国際的に核兵器をつくろうとしているのではないかと疑われます。日本は核兵器はつくらないことになっているのに、大量のプルトニウムを持っています。北朝鮮の比ではありません。その用途としては当初、高速増殖炉の燃料にと考えていました。ところが、実験炉のもんじゅが大事故を起こし、もう15年動かせずにいます。世界的に見ても高速増殖炉は実現困難な技術とされ、フランスもイギリスも実験炉を停止。ドイツは建設を中止しています。日本でもほぼ実用化は不可能と見られています。さて困った。プルトニウムの使いみちがないぞ!ということでその消費のために考えられているのがプルサーマルなのです。しかし、福島の原発でプルサーマルをやろうとしたところ、反対したのが佐藤知事でした。当時は日本中の原発で事故隠しが表に出てきていたときで、こんな状況で新しい発電法を許可するわけにはいかないとしたのです。予定では東電の福島第一で日本発のプルサーマルが行われるはずだったのを面子をつぶされたのが経産省、そして東電だったわけです。
 国策捜査第二の理由は、道州制に反対する知事の中心人物だったことです。道州制とは、県の上により大きな地方自治体をつくって行政を効率化させようという考えですが、官僚たちの思惑は知事の権限を取り上げてしまおうということに他なりません。つまり、佐藤知事のような言うこときかない知事以上の権限をもった州知事をつくるということです。
 まあ、政府(官僚)にとって福島の佐藤は邪魔な存在だったわけです。道州制の方は政権交代でうやむやになりましたが、プルサーマルは佐藤知事がいなくなったおかげで実施までこぎつけました。昨年の11月に東電ではありませんが九電の玄海原発でプルサーマルがはじまっています。政府にとって、もう佐藤知事の事件は無罪だろうがなんだろうがどうでも良いのです。現実として佐藤知事は失脚し、もう権限を持っていないのですから。
 本著ではこの事件の話だけでなく、なぜ佐藤栄佐久が議員となり、知事となったのかという話も書いてあります。彼は福島出身で東大法学部卒業の秀才です。卒業後は父親の会社、後に弟が社長となる三東スーツ(今回の事件の騒ぎのため倒産)で働いていましたが、青年会議所の活動に参加するようになりこちらが主務となります。活動の中で地域主権の重要性を感じるようになり、参議院に出馬し当選。そして知事へと転身し、保守系(官僚系)候補を破って当選。以降は絶大な強さを発揮し、5期連続で知事の座にありました。地元重視ゆえに絶大な人気を誇っていましたが、それゆえ中央と衝突し、原発でつぶされてしまったのです。
 政権交代はしましたが、今だ権限を握っているは中央官僚です。だからあれだけ小沢を攻撃しているわけです。さて、民主党は官僚たちから権限を取り上げられるでしょうか。官僚から国民へという政治ができるでしょうか。
 本著は今の小沢事件の構造を知る上でも是非とも読んどいた方がいい本です。
(★★★★)

【誰が日本の医療を殺すのか―「医療崩壊」の知られざる真実】
 本田 宏
 医療の現場がいかにひどいことになっているかを現役の医師が書いた本。現場で働く者の立場で国民のための医療を考える「NPO法人医療制度研究会」の代表理事もしているそうです。
 医療崩壊とは何のことを言っているのか。現在の医療現場というのは、医師の絶対数が不足し彼らがあまりにも多忙なため疲れきってしまっている。また、病院の経営もたいへん厳しい状況になっている。これは国の政策変更が招いた結果だと言うのです。高齢化が進む国では医療費が増えるのは必然だというのに、国は財政支出を抑えるために医療費削減の方向に舵を切り年々医療費は減らされそのしわ寄せが医療現場を直撃している。病院の収入は減る一方だと言うのに患者は増え、今まで無かった仕事もどんどん増えている。当直明けの手術というのも普通のことで、ひどいときは何日も家に帰れない。医師たちは生死と向き合ってるので現場は疎かにできず、気力でなんとか持ちこたえている。そんな状況で、経営が厳しくなった病院が閉鎖され。疲れた医師は倒れたり、やめたりで医療現場は悪化の一途。
 私も足折って長いこと入院していたので、ある程度の医者の大変さは知っていましたがここまでひどくなっているとは。しかも益々悪化しているというのですからなんとか手を打たないと。著者はまず、とにかく医師を増やすこと、新しい医者を育てることだと言っています。医者はすぐには育たないので、その効果が出るのは5年10年とかかるそうですが、今やらないと間に合わない。本著は政権交代前に書かれた本なのですが、政府はこんな状況だというのに、”医者は足りている”というスタンスを頑として変えようとしなかったそうです。
 医者の数は十分だが偏りがある。これはつまり、医療に予算を使わないための方便にしかすぎないのですが。
 それが政権交代し流れが変わりました。新政権は医学部の定員を増やすことを明言しています。この政策転換は”コンクリートから人へ”の象徴の1つと言えるでしょう。今回の政権交代の選挙では自民党の票田だったはずの医師会も次々に民主党支持を打ち出していましたが、彼らも自民党と官僚たちをついに見限ったということだったのでしょうね。
 著者は現役の医者でありながら、本著を出しNPOを運営しと精力的に活動しています。それも日本の医療を良くしようと思ってのことです。彼らのような医者がいたから日本の医療はなんとか守られていたのですね。
(★★★★)

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