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読書な毎日(190)

【国策の行方―上関原発計画の20年】 朝日新聞山口支局
 日本国内最後の原発予定地と言われる山口県上関での原発をめぐる20年間のルポ。朝日新聞山口支局が新聞記事を中心に独自取材も行っての力作です。原発計画が明らかになったのは1982年で本著が出版されたのは2001年。この間でも原発にとっての大事件がいくつも起きています。1986年のチェルノブイリ事故、1999年のJCO臨界事故などです。しかし、そんな状況でも行政側は一貫して推進姿勢です。
 中国電力は島根に一箇所原発を持っていましたが、もう一箇所原発の建設を画策していました。中電の範囲で最も電気を使うのは広島です。しかし、広島は原爆が落とされた場所だから無理だろう、ということで隣の山口で候補地を物色。最初に候補に上がった場所はちょっと忘れてしまいましたが、漁協が一致団結して反対し、10年ぐらいの闘争のうちに中電が断念。次に候補に上がったのが萩と上関でした。これは結局、上関に絞られ徐々に建設への流れがつくられていきます。この間、上関町長選が数回ありますが激戦の末いずれも推進派町長が当選。選挙では中電の社員が住民票を移したりと不正も行われたり、推進派と反対派はまっ二つに割れてしまいます。国策原発とは罪なもので、地域社会を引き裂いてしまったのです。こんな中、原発建設予定地の沖合いに浮かぶ祝島は漁協も住民も一貫して反対を表明しています。これは現在も変わっておらず、島という閉鎖性が強みとなっています。
 本著の出版以降は推進側は一時膠着状態となっていました。1つは用地の問題で、原発建設予定地の地所を神社が所有していてこの神主が建設に同意していない。もう一つは希少生物の問題で、スナメリという小型のイルカやここにしか生息していないナメクジウオや貝などが見つかり調査の必要が出てきたためです。そこに不況がやってきて電力需要は今後伸びる見込みがなくなってきた。私らがこの夏に祝島に上陸したときもそんな感じで推進も反対も一旦は落ち着いているように見えました。ところが政権交代したあたりから、中電が動き始めます。埋め立ての着工をしようと工事船を建設現場の田ノ浦に入れようとします。それを祝島の漁船が阻み、にらみ合いになっていました。そこで中電がだまし討ちをします。台風が近づいたこの10/7、漁船が帰ったそのすきをついて埋め立て工事を着工させてしまったのです。
 政権が変われば原発行政も変わるのかと思ったのですがどうやらそうではないようです。民主党には電力労組がついていて彼らは原発推進なのです。脱原発の社民党も連立なのですが、今のところほとんど効力がない感じ。
 上関原発の不要性については今さら書く必要もないでしょう。電気が余ってるというのに環境を破壊し無駄金を使うためにつくってるようなものです。
 八ツ場はあんなに騒がれていますが、こちらはほとんど取り上げられません。上関の方が遥かに有害性が高くお金もかかるというのに。これも止めなければいけない公共事業なのです。
 本著は長いですが、原発行政と地域の関わりがよくわかる本ですので、多くの人に読んでもらいたいです。鎌仲監督の「ミツバチの羽音と地球の回転」もあわせてね。
(★★★★)

【会津と長州、幕末維新の光と闇】 星 亮一、一坂 太郎
 会津と長州の幕末研究家による対談本。会津も長州も私には縁がないのですが、この夏に山口に旅行しその予習として読んだ本です。
 会津と長州の仲が悪くなったのは幕末のことです。ペリーが浦賀に入港し開国を迫り、日本中大騒ぎとなります。ここで倒幕運動や尊皇攘夷運動なども起こるのですが、会津は常に幕府側にいて地元が手薄になろうとも江戸や京都に軍を派遣します。一方の長州はと言えば、幕府側にいたかと思えば天皇側についたり、攘夷をやっていたかと思えば外国と手を結んだりと立場がころころ変わっていきます。会津は言ってみれば石頭エリートで、長州は狡猾な田舎侍なのです。
 会津は最後の最後まで幕府を守ろうとするが敗走して負けます。最後は土地を取り上げられ北の僻地で島流しのようになってしまう。この仕打ちのために大勢の会津人が死にます。そしてこうなったのは長州のせいだと思っているのです。一方の長州はと言えばそれほどの加害意識はないのです。この二つの地域のシコリはなんと現在も残っているのだそうです。
 私は幕末について詳しいことは知らないのですが、藩毎に特色あってなかなか興味深いと感じました。井伊大老が桜田門で首を切られますが、これがきっかけで倒幕運動は盛り上がり、井伊大老の水戸藩は力を失っていくなんて構図ががあったりしたんですね。藩を基準に幕末を見ると見え方が違ってきます。
 長州の末裔と言えばこの前まで総理だった安倍晋三。この長州からは祖父の岸を含め倒幕してから8人も総理を出している。一方の会津はゼロ。日本の勢力図も倒幕からずっと変わってないということだったのか!?
(★★★☆)

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