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読書な毎日(184)

【天のろくろ】 アーシュラ・K. ル=グウィン
 ジェイン・オースティンの読書会という映画の登場人物のSF好きがおすすめしていた本だったので読んでみました。1970年に書かれた著作で近未来の1990年ごろを舞台にしています。自分の見た夢に現実が変わってしまうという夢を見るオアはドラッグを不正使用することで夢を見ないようにしていた。しかし、それが発覚し精神科医のヘイバー博士の元に治療に送られることになる。最初はオアの話を信じなかった、ヘイバー博士だったがその効力に気づき、それを利用して夢を操作しようとします。
 SF青年がおすすめというだけの本です。SFではあるのですが、哲学的でもあります。ヘイバー博士は精力的で仕事好きで善意にあふれる研究者です。彼は純粋に世界を平和で良くしようと思っているのですが、なかなか思い通りにはいきません。人間社会というのも実はそうなのでしょう。悪いことしようなんて思ってるのはバイキンマンぐらいで、人は良いことしようと思って行動しているのです。
 1970年の近未来ですから、既に過去となっている時代ですが驚くほどに当たっている部分が多々あります。また、善意が招く夢の結果がこれからの近未来を当てそうで怖い部分もあります。例えば人口が多すぎるので、減った方がいいとヘイバー博士が思いそういう夢をオアに見させようとすると、世界は謎の伝染病におそわれて人口が半分以下となってしまいます。まるで300人委員会みたいだ(^^;;
 本作は映画化はされていないのですが、2002年に米国でTVドラマ化され日本でもDVDリリースされていました。現在は絶版となってしまっていますが是非とも見たい。
(★★★★☆)

【きょうもえんまん!―ビキニ環礁を追われた人々と暮らして】
 多田 智恵子
 青年協力隊として、マーシャルのキリ島で小学校の教師をした著者の手記。キリ島とはマーシャル諸島共和国にあり、元は無人島だった島。ここに米国の水爆実験によりビキニ環礁から強制移住させられた人が現在も住んでいます。なぜ無人島だったかというと、船で上陸するのに不適だからで人間が住みやすい島ではないからです。元々ビキニに住んでいた人は漁業をして生活をしていましたが、キリでは漁業はできません。彼らはなんと米国の配給で生活しているのです。水爆のために強制移住させたのだから、まあ当然と言えばそうなのですが、米国人はこのこと知ってるのかな?もともと南国で、しかも働かずとも配給で生きられるので、この島の人たちは実に適当に生きています(^^; 親がそうなら子どもも同じで、勉強などする気のない子ばかり。ついでに先生も全くやる気がない(^^; こんな島で日本人が先生をするというのは実に困難なことなのです。一緒に適当にやれば、まあ苦労はないのでしょうが(^^;
 著者の多田さんはこんな手記書いてるぐらいですから真面目でやる気のある先生です。2年目は米国からの3人の協力隊が加わり正に奮闘しています。著者の文章はユーモアがあって面白く、読ませます。
 水爆がなければ彼らは今も魚をとって暮らしていたのでしょうが、配給でもう50年も暮らしているので漁業のノウハウなどすっかり無くなっています。もし米国が配給を打ちきったら彼らはどうなるのでしょう。しかし、そんなことを露ほども考えないのがキリの人なのです。米国は実に罪作りなことをしているのです。
 水爆の放射能による被害については特にこの本には書かれていません。今だにビキニに戻れないことが最大の被害なんでしょうが、被爆の影響とか魚は大丈夫なんでしょうかね?
 ビキニデーは一応毎年記念日とされているのですが、キリではただのお祭りになっています。核兵器の意味も自分たちが故郷を追われたこともすっかり忘れているというか意識にないのです。日本も原爆を落とされたことを忘れていて、米軍基地が国内にあることを意識してないという点では同じかもしれませんが。
 水爆とビキニという話はよく聞きますがそのビキニにはどんなところでどんな人が住んでいるかについて私も全く知りませんでした。というわけで一読の価値ある本です。
(★★★★)

【全島避難せよ―ドキュメント伊豆大島大噴火】
 NHK取材班
 この春大島へ一泊旅行したのですがその予習として読んだ本。1986年の11月大島の三原山で大規模な噴火が起き全島民が1ヶ月にわたり避難しました。本著はそのドキュメンタリーです。
 私もこの噴火のことよく覚えています。連日テレビでは噴火の様子が映され割れ目が噴き出る溶岩の様子が非常に印象的でした。しかし、そのとき大島では何が起こっていて、避難生活はどうだったかということまで興味は及んでいませんでした。
 現地に行ってよくわかりましたが、1986年の噴火というのはカルデラの外の森に突如裂け目が出現し溶岩が噴出するというもので、噴火に慣れた島民も驚いたというものだったのです。そして、避難をめぐり警察や役所の支持系統は混乱したいへんな状況だったのです。しかし、そんな状況でも一夜にして全島民が脱出したのです。ここでは東海汽船が大活躍します。こういうときに役立つのは警察とか自衛隊ではないんですよ。
 帰島にあたっては火山学者と役人に間でせめぎあいがあります。火山学者はなかなか安全宣言をしてくれませんが、避難民のストレスは日を追って高まっていきます。そして帰島は鈴木都知事の主導で決定。正月前に島民は帰島することになります。しかし、観光産業は大打撃を受けてしまいます。
 大島に行って感じましたがあそこは火山とともに生活している町なのです。様々な構築物や、庭石などに溶岩の岩が多用されています。火山の写真もいたるところ貼ってありました。三原山の火山のことを現地の人は御神火(ごじんか)と呼ぶのだそうです。
 本著とは関係ないのですが、大島の火山博物館について少し書いておきます。元町の繁華街の少しはずれに火山博物館はあります。簡保資金で、1986年の噴火のあとに建てられたもの。大島だけでなく世界の火山についての展示があります。ギリシア神殿のような見事な建物で巨大スクリーンでは火山の映画を1日3回上映しています。この映画は展示とは別料金です。私たちがここに行ったのは土曜でしたが、お客は私ら含め3グループ程度。映画をみたのは我が家だけでした。大島には映画館ないみたいなのですが、こんな立派な施設で火山の映像だけ流しているとはもったいない(^^; 博物館の前に読売新聞と書かれたゴンドラが放置されていて何かと思ったら、正力大先生が”三原山火口探検”のときに使ったものなのだそうな。この企画は読売新聞に部数拡大に大きく貢献したらしいのですが、こんなとこに雨ざらしにしといていいの(^^; 読売新聞の玄関に飾った方がいいんじゃない(^^;?
(★★★)

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RE:今年のアカデミー賞

 結果へのコメントだいぶ遅くなってしまいましたがちょっと書いてみます(予想はこちら)。
 ここ数年の傾向ではありますが、ハリウッド映画に元気がありません。結局、作品賞含め主要部門をとったのはスラムドッグでした。世界中の映画賞をとっていますので、いい映画であることは間違いないのでしょう。しかし、インドの話でイギリス人監督ダニー・ボイルでハリウッドの俳優は出ていなく、大手スタジオでもないインディペンデントなこの映画がハリウッドの祭典でいわゆる大賞をとってしまうというのは実に不思議でした。

 もう1つ今回のアカデミーで特徴だったのは、ショーン・ペンがゲイ役で主演男優賞をとったこと。監督賞はとらなかったものの、この映画の監督のガス・ヴァン・サントはカミングアウトしているゲイ監督です。かつて、ヒラリー・スワンクが「ボーイズ・ドント・クライ」のトランス役で主演女優賞とりましたが、そろそろ本物のカミングアウト後のゲイかレズビアンがトランスが受賞しても良いでしょう(カミングアウト前ならジョディ・フォスターや、ケビン・スペイシーが受賞している)。しかし、その場合は主演何優賞になるのでしょう(^^;;?

 あと、外国語映画賞をとった”おくりびと”ですが、完全なダークホースでした。例年の外国語映画賞は既にたくさんの権威ある賞をとっている外国語の映画がとるのが常でしたが、おくりびとは世界ではほぼ無名の存在。監督も無名の存在。それでとったのだから、ものすごい快挙です。

 今年からアカデミー賞の選出の方法が変わったそうです。今までは試写会見に来れないアカデミー会員のためにノミネート作のDVDを送っていたそうなのですが、不正コピーの原因にもなるのでこれをやめ、試写会に来た人だけ投票するようにしたそうだ。つまり今までは映画を見ていなかったとしても、投票ができたということになる。中には評判だけで入れたり、ノミネート作でも見なかったりなんてことがあったのでしょう。おくりびとはもちろんこと、スラムドッグがとったのもこの新システムが効いているのかもね。良いことです。

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