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読書な毎日(172)

【死刑】 森 達也
 死刑にまつわるルポ。死刑と一口に言っても死刑には様々な人が関わっています。犯罪者。犯罪被害者(遺族)。冤罪者。法務大臣。国会議員。警察。検事。弁護士。裁判官。刑務官。ジャーナリスト。そしてマスコミと私たち。著者はオウム信者を撮ったドキュメンタリーの監督ですが、その映画を撮っている過程で信者が次々と死刑判決を受け、死刑について書いてみようと思ったそうです。
 私は死刑廃止論者で、死刑まわりの話はいろいろ知ってるつもりでしたが、さすが森達は皆が気づかないところに取材に出かけていき、知らない事が本著にはたくさん載っていました。また、死刑に関する人物オールキャストというぐらい、たくさんの人に取材している力作です。というわけで本著は死刑問題のシニアにも初心者にもおすすめの本、というよりすべての人に読んでほしい本です。
 オウム事件以降、日本の死刑容認論者は60%だったのが80%となり現在もそのままだそうです。死刑判決もそれを受けてか増えています。しかし、一方世界に目を転じると、死刑制度を存置している国はむしろ少数派となっています。また、死刑制度があっても実施しない国も増えています。いわゆる先進国と言われる国で死刑を存置しているのは日本とアメリカぐらいのもの(アメリカは50州のうち13州で廃止)なのです。死刑を存置している代表国は中国で年間になんと8000人も死刑執行しています。
 日本人の80%が死刑を容認しているのですが、なぜ死刑が必要なのか考えたことがあるでしょうか。一般的な理由は、1)被害者感情、2)悪いことした人への罰、3)犯罪抑止効果、こんなとこでしょうか。被害者感情と言いますが、殺されたから殺していいのでしょうか。殺され方にもいろいろあります。車にはねられる場合もあれば、通り魔もあれば怨恨もあります。それを裁判やって量刑決めるのではありますが、その最高刑が死刑でいいのか。死刑というのは健康な人間を国家のシステムで殺すことです。殺して償わせるというのは実に野蛮だと思いませんか。
 本著には死刑を実際に執行する刑務官の話も出ています。彼らは仕事として人殺しをしなければならないのです。絞首刑というのは実はそう簡単に死なず、吊るしてしばらくは生きているそうです。だからギロチンとか銃殺がいいと言ってるのではありません。人を殺すというのは野蛮な行為だし、人権を奪う行為です。殺人はいけないと罰するその罰で加害者を殺すというのは冷静に考えれば変ではないですか?
 話は変わり、本著を読んではじめて知りましたが”死刑の見えない化”が日本ではここ最近で急速に進んでいます。昔と言ってもほんの20年ぐらい前は、確定死刑囚でも他の囚人と一緒に作業したり、面会の制限も少なかったそうです。また、死刑の執行は数日前に告げられ執行前に親族と会うこともできました。ところが現在は、確定死刑囚は一人小部屋に閉じ込められ、面会も親族しか許されず、死刑執行を告げられるのはその日の朝。昔は取材ができた刑場などは今は取材申し込んでもできなくなっています。つまり死刑判決は増やしながら、死刑囚をなるべく見えない存在にしようとしているのです。しかし、国家がこうも頑なに死刑を存置しようと頑張っても世界の潮流にはおそらく逆らえないでしょう。なにしろ、今や死刑を存置しているのはイラン、イラク、北朝鮮、アメリカ、中国などの人権後進国だけだからです。日本のまわりを見ても韓国、フィリピン、カンボジア、ビルマでさえ死刑を事実上廃止しています。
 人権の成熟度の尺度として、まず最初に女性の参政権があります。次が死刑廃止。その次は同姓婚の合法化です。ヨーロッパでは既に、第二ステージをすべての国がクリアして第三ステージに入ってるところです。さて、日本が第二ステージをクリアするのはいつのことでしょうかね(^^;;
(★★★★☆)

【やっぱり危ないタミフル】 浜 六郎
 タミフルの薬害とそれにまつわる解熱剤などの薬害について書いてある本。タミフルはスイスのロシュ、日本では中外製薬が売っている新薬の解熱剤です。解熱剤とは脳に作用して熱を下げる薬のことで、インフルエンザの症状を改善させるというわけではありません。なぜ人間は風邪やインフルエンザにかかると熱が上がるかといえば、体温を上げてウイルスを撃退するためなのです。鳥肌がたったり、悪寒がするのは体温逃げないように、そして体温を上げるための体の反応なのです。それを強制的に脳のサーモスタットを切って熱を下げてしまうのが解熱剤。これにより体は楽になりますが、ウイルスが完全には撃退できず風邪が長引いたり、薬が切れた反動で高熱になったり、後遺症が出たりすることもあります。
 タミフルもその解熱剤の一つにすぎませんが、日本では”インフルエンザの特効薬”のように宣伝され、タミフル薬害が表立って出るまでは奪い合いみたいなことになっていました。タミフルの薬害(副作用)として、幻覚ばかりがとりあげられていますが、むしろそれより呼吸停止で亡くなる人の方が多いそうです。薬を飲んで就寝中に呼吸停止しそのまま死んでしまうのです。なんとオソロシイ....。ところが、タミフルのこの薬害についてはマスコミは全く報道しないのだそうです。なんででしょう?
 ”インフルエンザは風邪とは違う”とか”インフルエンザ脳症は怖い”と言ってお役所主導でタミフルキャンペーンは行われましたが、この2つともプロパガンダのようなものだそうです。インフルエンザも風邪も基本は同じでかかるウイルスが違うだけ。またインフルエンザと言ってもその型により症状は異なり、一くくりでタミフルをうつのはおかしな話だし、予防でうつなんてのはもっての他。インフルエンザ脳症はむしろ薬の副作用で起こるもので、解熱剤を処方することによりその危険性がむしろ高まるそうだ。
 新薬はそれを開発した企業にとっては是非とも売りたいものです。なぜなら、新薬には特許があり独占的に販売できるからです。というわけでタミフルをつくった会社は相当に儲けています。またその許認可権を持つお役人だっておいしい汁を吸っていること間違いありません。
 本著は実例を示しながら、タミフルだけにとどまらず幅広く薬やその副作用について解説していて非常に勉強になりました。効能などあまり気にせず、風邪ひいたら薬のんどけばいいというわけではないのです。薬を飲むにしても何を飲んでるか理解して飲まないと危ないのです。
 では、風邪をひいたりインフルエンザにかかったらどうすればいいのか。暖かくして寝て食事して体力を回復するのが一番だそうだ。薬は何も必要なし。インフルエンザにかかったぐらいで、脳症になったり死んだりすることはまずないそうです。もし、セキが止まらなかったり、熱が高くてつらい場合は体力を消耗しないように薬を飲んでもいいでしょう。でもタミフルは飲んではいけません。まあ、とにかく薬はできるだけ飲まない方がいいということです。
 タミフルだけでなく薬と病気の関係が非常によくわかりますので、すべての人に読んでもらいたい本です。
(★★★★☆)

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