« コラムyokoze「プリペイド携帯が買えない(2)」 | トップページ | コラムyokoze「続・ブロックされるweb」 »

読書な毎日(157)

【戦場が培った非戦】 渡邉 修孝
 イラクで起こった日本人拘束事件の一人の著者の半生の手記。著者は学校卒業後に自衛隊の習志野空挺段に入り、右翼活動に興味を持つがそのため半強制的に除隊させられる。その後右翼団体に所属しビルマのカレン族反政府ゲリラに従軍。帰国後、右翼団体の一水会に所属するが会のありかたに疑問をもち脱会。以降は左翼系の組織に転向し、レバノン日本赤軍の岡本公三の身の回りの世話も一時していたというすごい経歴を持っています。
 あまりとりあげられることない、自衛隊や右翼の内情、そして義勇兵のことなど非常に興味深いです。こんな世界もあるんだなと感心しました。著者は今まで武力や力による活動の世界を中心としてきたのですが、現在はそれを否定しています。
 彼のような経歴を持っていると、就職はなかなかできず警備員として働くことが多いそうです。また、常に公安が彼のことをマークしているようです。しかし公安も彼のような平和的な人物をいつまでもマークしていて何の意味があるんですかね。まあ、政策に異議をとなえることは多いのでしょうが。
 前著の「戦場イラクからのメール」同様非常に読みやすい文書です。彼のような活動家がいるということを多くの人が知って欲しいと思いました。
(★★★★)

【ポピュリズムに蝕まれるフランス】 国末 憲人
 仏駐在の著者が書いたフランスの政治情勢についての本。2005年に出版された本ですので、サルコジ前の状況です。ポピュリズムというのは”カリスマ性を有すると見なされた為政者が、一般大衆と立場を同じくすることを強調して行う政治手法”のことで、日本で言えば小泉元総理。フランスではルペンそしてシラクもポピュリズム的傾向があると著者は言ってます。本著の中にはサルコジも登場していますが、もちろん彼もポピュリズムです。ルペンが決戦投票に残った2002年の大統領選について多く書かれています。誰もがシラクとジョスパンの決戦投票だと思っていたところ、僅差でジョスパンを退けなんとルペンが残ります。この第一回目の投票行動を見ると、決戦ではジョスパンに入れようと思っていた左派系の人たちが、第一回目の投票ではより左派系の候補に入れたり、どうせジョスパンだからということで棄権していたようなのです。そこを思った以上に支持を得ていたルペンが寄り切ってしまった。そしてジョスパンは決戦投票に残れなかったことにより政界を引退してしまうのです。そして5年後はご存知の通りサルコジです。ちなみにバイルは登場するのですが、ロワイヤルは本著では全く登場しません。つまり、急浮上した候補ってことなんでしょうね。というわけで2007年の大統領選ではサルコジに負けてしまった。しかし、ロワイヤルもやはりポピュリズム的傾向があると私は思います。ポピュリズムはフランスに限らず世界的な傾向なのでしょう。メディアに露出し単純でわかりやすいメッセージを発する人が有利なのです。市民がそういう流れに迎合してしまうと政治はますますポピュリズム的になってしまいます。
 その他の話題で特にスカーフ問題が興味深かった。日本の報道ではあの騒ぎはいったい何だ問題なのかよくわからなかったのですが、表向きは公の場で布教に準ずる行為をしてはいけないということ。フランスでは歴史的にカトリックが大きな勢力をもち、政治や教育にに大きな影響を与え、マイノリティを弾圧したという教訓から、宗教と政治や教育などを分離させる法律があるのです。十字架も学校では首からぶら下げてはいけないそうなのですが、スカーフをつけることが布教活動にあたるのですかね?そして、裏事情としてはやはり移民の問題があります。フランスで移民と言えばイスラム圏の人々で、フランス社会が非寛容なこともあり彼らは集まって暮らしていることが多い。彼らの失業率はフランス一般よりも高く、その地域の治安は良くない。つまり、イスラム教=移民=受け入れたくない人たち という方程式が成り立ってしまうのです。スカーフ問題はかなり昔からあったことはあったようなのですが、マスコミがとりあげたことにより国民的な騒ぎとなり、法制化までされてしまいました。日本人から見るとやりすぎと思われるこのスカーフ禁止法ですが、フランスの政界そして一般にもどうやら評価されているようです。
 フランスの政治情勢について書かれた本は少ないので、その近況を知る上で重要な一冊だと思います。
(★★★☆)

【パリの女は産んでいる】 中島 さおり
 少子化傾向のある先進国が多い中でフランスは、出生率が大きく回復している。それはなぜかというのを現地に住む日本人が書いた本。
 少子化克服要因はいろいろあるのですが、一番大きいのはシングルマザーであることが社会的に容認され補助も手厚いことによります。結婚しているいないに関わらず子どもを産み、離婚しても子どもを育てるというのが普通になっているのです。また、子どもを二人三人と産む人が多く、三人目以上になると更に補助が手厚くなります。以外にも高齢出産の女性が多く30代後半から40代で産むのも普通のこと。ある程度のキャリアを積んでから子どもを産むという女性も多いのです。
 働きながら子どもを育てる環境も整っています。保育園ももちろんあるのですが、ベビーシッターがたくさんいて賃金も適当で、仕事のときだけでなく夫婦の用事のときに預けるというのも普通に行われています。だから、子どもがいるからできないという制約があまりないのです。
 また、中絶や避妊に対し社会が寛容なことも大きい。キリスト教国で常に争点になる中絶問題ですが、フランスでは日本並に容認されているよう。中絶がいつでもできるということは逆に言えばいつでも産めるということなのです。
 つまり、好きなときに産み、育て、離婚するということができるのです。フランスも昔からこうだったわけではなく、60年代以降で徐々に社会がそうなっていったのです。
 自分の体験をベースに書いているので読みやすく現実感があります。著者は中の上ぐらいの生活のようですので、そのコミュニティ中心の話ではありますが、フランスがなぜ少子化を克服したかというのがわかります。ピルによる避妊が一般的であるとか、無痛分娩が一般的であるとか、ゲイには意外と不寛容などその他にも知らないフランス情報が載っていてなかなか興味深い本でした。
(★★★☆)

|

« コラムyokoze「プリペイド携帯が買えない(2)」 | トップページ | コラムyokoze「続・ブロックされるweb」 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/9379/15680120

この記事へのトラックバック一覧です: 読書な毎日(157):

« コラムyokoze「プリペイド携帯が買えない(2)」 | トップページ | コラムyokoze「続・ブロックされるweb」 »