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読書な毎日(147)

【リー・クアンユー回顧録(上)】 リー・クアンユー
 シンガポールの初代首相リー・クアンユーの回顧録。首相退陣後の1999年に書かれたもの。上巻はリー・クアンユーの生い立ちから1965年の独立までについて書いてあります。シンガポールは今では東南アジアの優等生なんて言われていますが、1965年に独立したとき本当はマレーシアと合併したかったのを追い出され、資源も国力もないのに周辺国の中で孤立し非常に厳しい状況だった、ということを本著を読んではじめて知りました。
 その他にも興味深いエピソードたくさん載っています。特に日本の占領時代はクアンユー自身も忘れられないことで、彼のその後の人生に大きな影響を及ぼしたようです。
 シンガポールというと多民族が仲良く暮らしている資本主義国というのが今の一般的なイメージですが、そこに至るまでは紆余曲折があったのです。もともとシンガポールはマレーシア含め、イギリスの植民地でした。そこに日本軍が侵攻し占領。日本が敗戦した後は再びイギリスの植民地に。そこから独立運動がはじまるが、中国人の多いシンガポールは共産党系の勢力が強く、イギリス寄りのマレーシアとはなかなか折り合いがつかなくなっていく。結局はマレーシアと別れた形での独立となります。
 クアンユー自身は英語教育を受けイギリスに留学し、ラッフルズ学院も首席で弁護士になったエリートと言って良いでしょう。しかし、そういったエリート臭さは当時のシンガポールではマイナスで彼は共産勢力の力をかりつつ無党派的に政党を立ち上げ徐々に支持を拡大していきます。本著の後半はその過程での彼の選挙戦術となぜ共産勢力と協力しなければならなかったかという言い訳が満載されています(^^; 多民族、多言語の国家で多くの支持を得るのがいかに難しいかというのがわかります。クアンユーは中国系なのですが、最初は英語とマレー語しかしゃべれません。しかし、シンガポールの多くは中国人で彼は北京語をまず勉強します。けれど北京語だけでは十分でなく福建語の勉強もします。同じ中国語ですが、この習得にかなり苦労した様子がうかがえます。
 本著ではどうやって支持を集めるかという話はたくさん書いてあるのですが、どういう国をつくるかということについてはあまり書いてありません。おそらくそれは下巻の方に書いてあると思われるので、近く読んでみようと思っています。
 クアンユーが類まれな政治家であり、ネゴシエーターであるというのが本著を読むとよくわかるのですが、文書を書く能力もたいしたものです。これだけの内容を理路整然としかも飽きさせずに読ませることは、そうはできないものです。しかも実に謙虚で自慢話になっていません。やはり、シンガポールは彼あってのシンガポールなんですね。
(★★★★)

【大増税のカラクリ】 斎藤 貴男
 主にサラリーマンの税金について、その成立ちから、諸外国との比較、そしてこれから政府がどうしようとしているかについて書いてあります。
 私もサラリーマンですが、サラリーマンの税金は天引き、すなわち源泉徴収という方法で企業が一括しておさめています。この方式をとっているのは日本だけではありませんが、年末調整まで企業がやってくれて通常は税務署とやりとりする必要がないというのは日本ぐらいのようだ。その日本もこの体制が整ったのは太平洋戦争前の話で、それまでは確定申告していたのです。それが戦時体制となり効率的な税の徴収制度として誕生したのが今の形。戦争が終わったあと、元の確定申告型に戻そうという勢力もあったのですが、戦時体制のまま今に至っています(^^;
 言ってみればお役所の仕事を肩代わりして企業が行っているのですが、企業は何の文句も言わずこの作業を毎年しています。この源泉徴収という制度。サラリーマンにとってのメリットは確定申告をしなくていいことです。年に一回ですがその手間が省けます。デメリットとしては、税金をいくら払ってるか正確には意識しなくなる。つまり、納税者意識が希薄になるということです。これは逆にとる側からすれば大きなメリットです。そしてとる側のもう一つの大きなメリットは取りっぱぐれがないということです。サラリーマン脱税の可能性はほぼ無いと言って良いでしょう(^^;
 サラリーマンは納税意識が低いと書きましたが、一方の企業は雇用者の代理で納めているのにすぎないのに、俺たちがおさめているんだ!という変な意識があるような気がします。お役所の方も企業がたくさん税金納めているような錯覚をしているようです。つまり、サラリーマンはしっかり納めてるのに、ありがたがられていないのです(^^;
 こんなサラリーマン税制ですが、ますます悪化の方向にあります。恒久減税として行われたはずだったサラリーマンの定率減税は今年で全廃されます。これだけではなく、今後は生保控除や所得控除にまで手をつけようとしています。消費税も上げるつもりです。大人しくしていると政府の無駄遣いを全部肩代わりさせられてしまいます。
 税金の話はなんか面倒くさそうですが、正に自分が払ってるお金なんですから最低限は身に着けておきたいものです。本著は税調のやり口や、今後の向かいそうな方向まで分析してあってたいへん勉強になりました。サラリーマンはこの本読んでもっと怒りましょう!
(★★★★)

【真実のイスラーム】 鈴木 紘司
 副題は聖典『コーラン』がわかれば、イスラーム世界がわかる。イスラム教信者の著者が主にコーランについて書いた本。コーランとは1種類しかなく、しかもアラビア語で書かれたものしかないのだそうです。これというのは、解釈の違いが出たりするといけないからということだそうです。コーランができたのは西暦650年ごろと比較的最近のことで、そのため当時からその内容は変わっていないのだとか。
 イスラム教というと、聖戦とか自爆テロ、禁酒なんていうものが一般的には連想されてしまうのでしょうが、コーランとは人間の普遍的な指南書のようです。人間が生活する上で迷ったときにこうしたらいいとか、こうすべきだということが書いてあります。聖書は隠喩的な物語ですが、それと比較すると別物と言って良いでしょう。酒についてコーランでは人間の間に敵意と憎悪をあおり神を忘れさせ礼拝を怠らせると書いてある部分もあれば、酒は人間に対する恩恵と書いてある部分もあります。つまり人によって毒にも薬にもなるということなのでしょうが、イスラム教ではこれを禁酒と読んでるようです。解釈が分かれないようにとしているコーランですが、どんなにわかり易く書いても人間は都合の良いように解釈するものだから、いっそ酒は禁止にしたんですかね(^^;;
 イスラム教という言葉はよく聞くけれどその元となるコーランについては私も良く知らなかったので、大変勉強になりました。本著はコーランへの導入みたいな感じですので、興味持ったらより詳しいコーラン関係の書物を読んでみるといいのでは。
(★★★★)

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